映画音痴

映画初心者による感想文

裏切りのサーカス

 

裏切りのサーカス 2012年公開

監督:トーマス・アルフレッドソン

キャスト:ゲイリー・オールドマンコリン・ファース

youtu.be

 

スパイ映画。引退に追い込まれた老スパイに"古巣に関する依頼"が舞い込む。

それは「二重スパイ:モグラ」を見つけ出せというもの。ともに活動していた仲間の中からモグラを見つけ出すために動きだす主人公。

重要な手掛かりは自身が引退に追い込まれるきっかけとなったある"作戦失敗"だった。

 

::以下ネタバレを含む感想::

 

正直難しすぎてキョトン(・ω・?)となる場面が多かった。

難しいと感じた理由は

・シーンがパッチワークのように組まれている

・外国人の名前が一人につき何種類も出てくる

・基本的に説明がない

・わかりやすい敵が出てくるわけではない

このあたりが歴史を知らない映画音痴を苦しめた理由だった。

けれども、難しい映画だったからつまらなかったかと言われると決してそうではない。

乏しい語彙でいうと

めっっちゃくちゃ面白かった。

 

シーンの一つ一つが渋くて美しく、常に緊張感があるので本当にあっという間の2時間7分。魅入ってしまうほどいちいち美しい。

正直展開が全く読めないので、目を離した瞬間に主人公がパァン‼︎と撃たれてしまいそうな危うさを感じる。なのでめっちゃ緊張する。

 

映画はもちろん面白かったが、視聴後にネットで解説を読んでいる時が一番興奮したし

「あなたは2度観る」的なキャッチコピーも頷ける。

大ドンデン返しモノによくあるコピーだと思うが、この映画に関しては

「別に気がつかなくてもいいけど気がつくとめっちゃ興奮するよね」的なものがちりばめられている。

それは主人公が手紙を置くだけのシーンであったり飾られた絵を見ているだけだったり。ものすごく些細なところがもう一度観たい。

頭を空っぽにしながらラブコメを観るのが好きな私には非常に疲れる映画だったが

「映画って面白いっすね!!」と人に話して回りたくなるような作品だった。

シーンの一つ一つで何が語られているかを考えないといけないので

知識も理解力も乏しい私には賢い人の解説がないと面白さが半減してしまうが、

あとあと発見する楽しみが待っているのでこれはこれで楽しみ方としてはすごくいい。

あー面白かった。

 

・やたらと年寄りのいる川で泳ぐ主人公

解説を読んで知ったがハッテン場のような川らしい。本編には関係がないと思う。

ブロマンスやライバルへの執着、美しさ、尊さ、ゲイ。多くを語られるわけではないので「お察し」レベルのものがちりばめられているのがなんともよかった。

・昼顔

そもそもがスマイリーを動揺させるための不倫であるので、スマイリーに勘付かせるための演技なのだろうが

明らかに情事後のベッドから抜け出してきたという仕草がお粗末で

スパイのくせに不倫の後始末が下手くそなコリン・ファースの足元が超愛おしい。

スパイなら「なんでこいつこんなに不倫下手くそなんだ?」ってここで疑っても良さそうなもんだけれど、奥さんのことになるとポンコツになっちゃうんだもんねってことなのかな。

・資料を手に入れろ!

ベネディクト・カンバーバッチってサミュエル・L・ジャクソン並みに声に出して読みたい名前だと思うんだけどどうだろうか。

あまり表情が出るキャラクターではなかったが、資料を盗みにいった後、リッキーを見た途端にブチ切れているのが人間的ですごくよかった。怖かったよね、そうだよね、って声をかけたくなるかわいさだった。

・涙型のサイレントショット

これはもう本当に美しかった。

色々あったけど先生として第二の人生を歩んでいて、それも悪くないなって思っていたであろうジムが、愛しい愛しいビルの裏切りを自分の意思で制裁しに行くわけだけれど、それってどんな心境なんだろうな。

ビルのせいで死にかけたがビルによって生かされてたことは多分理解しているんだよね。そしてこれまでの友情も愛情も全部嘘だったかもしれないし本当だったかもしれないし、頭の中無茶無茶だよね。

ビルがジムの自宅で組織との関係資料を整理していた時に写真を胸に仕舞っていたのは愛情によるものだと思っていたけど、自分へ危害が及ぶことを危惧しての自衛だったらしい解説を読んで何とも言えない気持ちになった。

最後のビルの表情は何だろう。「俺はお前を助けたのに何なんだよ」なのか「そうだよな、君にはその権利がある」なのか。わからない。

あのシーンはビルとジムの心中だと思いたいところなんだけど、ビルが「俺はもっと大物になれる逸材なのに!」って思ってるだけの駄々っ子だったらそうではないだろう。

ビルが本当に、送還先で家がもらえるような待遇を受けられるのが周知の事実だったら違うとは思うが、送還先での未来がないのであれば(拷問的なものが待ち受けているのであれば)、ビルの幸せのためにジムが殺した悲しい愛のシーンとも思えたり思えなかったり。

ジム狙撃の報を受けた時の激昂も、ジムの安否を心配した愛情であって欲しいけど、自分との繋がりとかモグラがバレるとかそういう自分の事しか考えてないシーンなのかも知れない。

パーティーシーンでのジムとビルのやりとりって、ジムには悲恋の相が出ているもんな。

ちょっと自分の趣向のせいで物語の見方がおかしいような気もする。

 

・ラストシーン

散々色々な人の思惑を見せつけられた後に、

ラストはスマイリーが組織の重鎮に返り咲くわけだが、ニヤリと笑うその表情が

「計画通り(ニヤリ)」みたいに見えてしまってなんか疑ってしまった。