キングコング:髑髏島の巨神
公開年:2017
キャスト:トム・ヒドルストン/サミュエル・L・ジャクソン/ブリー・ラーソン/
シェー・ウィガム
*衛星により地図にない島が発見される。学者たちと護衛隊が島へ向かうと現れたのは絶望的な強さを持ったキングコング。果たして生きて島を出られるか。*
単なるパニック映画だろうと思いつつ、美しいトムヒが見られるかもしれないという、その一念だけで観た。一言で言うと
最高だった
恐ろしい残酷なシーンや緊張感で頭がどうにかなりそうな場面はもちろんあるが、それも全体からすると少々のスパイス程度で、
終始「え、ずいぶん状況が絶望的だけどこの先どうなるの…!?」というワクワク感が止まらなかった。
4DXでジュラシック・ワールドを見たときはほぼほぼ目をつむっていたし、
目を覆い隠しても足元にムチが飛んできたりする4DXは恐怖でしかなかった。早くお家に帰りたかった。
もう2度とこんな映画は観ないと思ったもんだが、この作品は半目で視聴することができた。半目で見てもトム・ヒドルストンは美しい。
なので私のようにパニック映画が苦手な層にも楽しめる作品であると思う。
なんせストーリーが面白い。
::以下ネタバレを含む感想::
冒頭、まだ巨神が単なる恐ろしい脅威or害獣としか認識されていないあの絶望的な破壊シーンの後、巨神にメンチを切るサミュエル・L・ジャクソンには痺れた。
もう一生ついていきます!と言いたくなるような眼光だった。
しかしシーンが進めば進むほど、どんどんやばいおじさんが露呈しだしたので、
映画の後半では私が撃ち殺してやろうかと思ったほどである。
この映画で最も人を殺したのはサミュエル演じるパッカード大佐だった。
もうお前何やってんの?って感じだ。
考えてみれば映画の導入シーンでは、先の戦争で失った仲間の形見を見つめ居場所を失った雰囲気をまとい、
この作戦の命を受けた時はわざわざ上官に「Thank You」なんて返したくらいの死にたがり野郎である。
先の戦争で失った仲間の"死んでいった意味"のようなものを追い求めていたようだが、
巨神からすればお門違いもいいところである。
最初のうちは仲間への思い入れの強い責任感のある大佐だなと思って観ていたが、
執着しているのは死んでいった仲間への想いなのか自分自身の肯定なのか怪しいもんである。
リーダーとしてはカリスマ性だけで素質なかったんじゃないの?と言いたくなるほどお粗末なのはチャップマンの捜索。おじさん完全にヤバい感じに出来上がってる。
わかりきった展開ではあったが、全員が並んで歩いているシーンを見たときは
「民間人ぞろぞろ連れてどこ行くの?ピクニック?」と思わざるを得なかった。
二手に分かれる選択はあの場合危険なんだろうか。なんなら大佐一人でもよかったんじゃないか。
その手前、「ヤダヤダ僕チャップマン探すんだもん!」のシーンでトムヒ演じるジェームズがなだめすかしたのは賢いなあと思った。あんな目の血走ったインクレディブルな彼に正論は無駄であり、パニックは簡単に人やチームを殺すので、冷静なジェームズはさすが高給戦士である。
ただあれだけやばそうな彼をそのままにしといたのはどうだったんだろう。
結果、死人を探す旅に出て、たくさん死んだ。
私なら「言わんこっちゃない!お前のせいで何人が無駄死にしたんだよ!」と怒鳴りつけたくなるが、それをしないのがジェームズの凄さなんだろうな。
こうしてどんどん後戻りができなくなった大佐の意地とプライドをかけた巨神との戦闘は、巨神を倒すに至るくらいのスキルはあったようだが、やはり自殺なら一人で勝手にやってくれと言った感じである。
格好良かったのはシェー・ウィガム演じるコール大尉だ。
大トカゲに手榴弾で向かって行ったのは本当に格好良く、
いつもクールに冗談を飛ばしていた彼の凄さに、ここでようやく気がついた。
冗談を飛ばすキャラだから飄々としているのではなく、お家に帰りたがりのミルズをうまくなだめて誘導していたんだと、人間力の高さにため息が出る。
母親から聞かされている昔話がずいぶん物騒で、ミルズも「ああなるほどな」と言ってしまうほど、戦場の似合う男だった。だが、決して戦いマニアのバカなのではなく
ランダに向かって「これは戦争か?俺らこそが戦争を作ってないか?」的な、
「追い求めるから戦争になるんだ」という、髑髏島だけに留まらない確信を不意につく。
そんな状況判断に長けた男だからこそ、ミルズの心も潰さずにいられたであろうし、彼の死に際の行動に至ったんだろう。
観客の期待むなしく無残にも散ることとなったが、成功していればいい足止めになったに違いない。
惜しむらくは、巨神も、巨神と対等にやりあう大トカゲにも、想像よりはるかに優れた知能があると気がつけなかったことだろう。いやでも無理だよねー
このあたりでふと気がつくのは「トムヒ、、戦闘シーンは、、?」である。
チャップマン探しで小トカゲに奮闘していた時の彼は格好良かったし、美しかったのでもう一度観たいシーンNO.1ではあるのだが
勧誘中のバーであんなに報奨金ふっかけて格好つけていた割には目立ったアクションシーンが少なくて驚いた。
(でもよくよく振り返れば、チームをまとめるスキル、人を守る能力や機転、頭の回転の速さ、なんかめっちゃ美しそうな心、など、
彼があの現場で活躍している様子はなんかたくさんあった気もする。)
大事なのは優れた戦闘能力よりも人間力。
とにかくめちゃくちゃ美しくて格好良かったのは確かだ。
そして単に見とれてて覚えていない可能性もある。
「戦からは誰も帰らない。元のままでは」のセリフはまさにパッカード大佐のことだっただろう。あのおじさんは多分社会復帰は無理だよね。
・エンドロール後のミニドラマ
"その後エピソード"が好きな私には嬉しかったが
「え、君たちまたどっか行くの?やめときなよ!触らぬ神に祟りなしだよ!」と助言したくなった。
・日本人イカリ
かっこよかったし良いエピソードだし、彼の刀を使うのも燃える展開だったが、
墓標として飾ってた割には切れ味が抜群だったので「妖刀かなんかなの?」と言いたくなった。
・”不名誉よりも死”
マーロウ中尉にとって衝撃的なマインドであったんだろうし、あのサムライスピリッツとともに戦ってくれたおかげで、彼の中にイカリが生き続けるのかと思うとなかなかグッとくる。
絶対悪だろうと思って観ていたキングコングが
最終的にめっちゃ可愛いゴリラさんになったのは衝撃だった。
はーめっちゃ面白かった。
裏切りのサーカス
裏切りのサーカス 2012年公開
キャスト:ゲイリー・オールドマン/コリン・ファース
スパイ映画。引退に追い込まれた老スパイに"古巣に関する依頼"が舞い込む。
それは「二重スパイ:モグラ」を見つけ出せというもの。ともに活動していた仲間の中からモグラを見つけ出すために動きだす主人公。
重要な手掛かりは自身が引退に追い込まれるきっかけとなったある"作戦失敗"だった。
::以下ネタバレを含む感想::
正直難しすぎてキョトン(・ω・?)となる場面が多かった。
難しいと感じた理由は
・シーンがパッチワークのように組まれている
・外国人の名前が一人につき何種類も出てくる
・基本的に説明がない
・わかりやすい敵が出てくるわけではない
このあたりが歴史を知らない映画音痴を苦しめた理由だった。
けれども、難しい映画だったからつまらなかったかと言われると決してそうではない。
乏しい語彙でいうと
めっっちゃくちゃ面白かった。
シーンの一つ一つが渋くて美しく、常に緊張感があるので本当にあっという間の2時間7分。魅入ってしまうほどいちいち美しい。
正直展開が全く読めないので、目を離した瞬間に主人公がパァン‼︎と撃たれてしまいそうな危うさを感じる。なのでめっちゃ緊張する。
映画はもちろん面白かったが、視聴後にネットで解説を読んでいる時が一番興奮したし
「あなたは2度観る」的なキャッチコピーも頷ける。
大ドンデン返しモノによくあるコピーだと思うが、この映画に関しては
「別に気がつかなくてもいいけど気がつくとめっちゃ興奮するよね」的なものがちりばめられている。
それは主人公が手紙を置くだけのシーンであったり飾られた絵を見ているだけだったり。ものすごく些細なところがもう一度観たい。
頭を空っぽにしながらラブコメを観るのが好きな私には非常に疲れる映画だったが
「映画って面白いっすね!!」と人に話して回りたくなるような作品だった。
シーンの一つ一つで何が語られているかを考えないといけないので
知識も理解力も乏しい私には賢い人の解説がないと面白さが半減してしまうが、
あとあと発見する楽しみが待っているのでこれはこれで楽しみ方としてはすごくいい。
あー面白かった。
・やたらと年寄りのいる川で泳ぐ主人公
解説を読んで知ったがハッテン場のような川らしい。本編には関係がないと思う。
ブロマンスやライバルへの執着、美しさ、尊さ、ゲイ。多くを語られるわけではないので「お察し」レベルのものがちりばめられているのがなんともよかった。
・昼顔
そもそもがスマイリーを動揺させるための不倫であるので、スマイリーに勘付かせるための演技なのだろうが
明らかに情事後のベッドから抜け出してきたという仕草がお粗末で
スパイのくせに不倫の後始末が下手くそなコリン・ファースの足元が超愛おしい。
スパイなら「なんでこいつこんなに不倫下手くそなんだ?」ってここで疑っても良さそうなもんだけれど、奥さんのことになるとポンコツになっちゃうんだもんねってことなのかな。
・資料を手に入れろ!
ベネディクト・カンバーバッチってサミュエル・L・ジャクソン並みに声に出して読みたい名前だと思うんだけどどうだろうか。
あまり表情が出るキャラクターではなかったが、資料を盗みにいった後、リッキーを見た途端にブチ切れているのが人間的ですごくよかった。怖かったよね、そうだよね、って声をかけたくなるかわいさだった。
・涙型のサイレントショット
これはもう本当に美しかった。
色々あったけど先生として第二の人生を歩んでいて、それも悪くないなって思っていたであろうジムが、愛しい愛しいビルの裏切りを自分の意思で制裁しに行くわけだけれど、それってどんな心境なんだろうな。
ビルのせいで死にかけたがビルによって生かされてたことは多分理解しているんだよね。そしてこれまでの友情も愛情も全部嘘だったかもしれないし本当だったかもしれないし、頭の中無茶無茶だよね。
ビルがジムの自宅で組織との関係資料を整理していた時に写真を胸に仕舞っていたのは愛情によるものだと思っていたけど、自分へ危害が及ぶことを危惧しての自衛だったらしい解説を読んで何とも言えない気持ちになった。
最後のビルの表情は何だろう。「俺はお前を助けたのに何なんだよ」なのか「そうだよな、君にはその権利がある」なのか。わからない。
あのシーンはビルとジムの心中だと思いたいところなんだけど、ビルが「俺はもっと大物になれる逸材なのに!」って思ってるだけの駄々っ子だったらそうではないだろう。
ビルが本当に、送還先で家がもらえるような待遇を受けられるのが周知の事実だったら違うとは思うが、送還先での未来がないのであれば(拷問的なものが待ち受けているのであれば)、ビルの幸せのためにジムが殺した悲しい愛のシーンとも思えたり思えなかったり。
ジム狙撃の報を受けた時の激昂も、ジムの安否を心配した愛情であって欲しいけど、自分との繋がりとかモグラがバレるとかそういう自分の事しか考えてないシーンなのかも知れない。
パーティーシーンでのジムとビルのやりとりって、ジムには悲恋の相が出ているもんな。
ちょっと自分の趣向のせいで物語の見方がおかしいような気もする。
・ラストシーン
散々色々な人の思惑を見せつけられた後に、
ラストはスマイリーが組織の重鎮に返り咲くわけだが、ニヤリと笑うその表情が
「計画通り(ニヤリ)」みたいに見えてしまってなんか疑ってしまった。